山梨県笛吹市(旧石和町)関本家資料解説

関本家資料デジタルアーカイブに関する解説です。

 山梨県笛吹市の関本勘楠(現9代目当主)家は、家系図によれば文化13年出生(1816)の初代から、大正15年没の第6代まで当主は代々勘左衛門を襲名しており、残存する資料などから江戸の中期までは確実に遡ることができる名家である。

 最も古い資料として、山梨県立博物館に寄贈されている2500余点の内、元禄3年(1692)2月10日と記されている「慶長六年御縄打甲州大石和筋中川村水帳」、宝暦4年(1754)2月12日の「関本家宛月牌造立請書」等がそれを証明している。明治元年生まれの襲名最後の勘左衛門(大正15年没)の資料が語るところによれば、酒類醸造業、材木業、金融業、養蚕業を営む素封家であった。屋号は 松永屋。勘左衛門は大正6年「英村信用購買組合」を創立。村会議員、県会議員なども歴任した。明治31年生まれの長男勘也(昭和51年没)は、日川中学から、東京大学経済学部を卒業し、日本勧業銀行に入行、四国高知銀行など各支店に勤務。退職後は家庭裁判所調査官等に任命される。この間の松永屋は三男の温が継ぎ、その長男の得郎(山梨県農協中央会会長)へと続く。勘也の長男・勘次は昭和9年出生。東京大学卒業後、長期信用銀行から日本輸出入銀行に転じニューデリー、パリ駐在員。後にトレイン・E・プロジェクトファイナンス株式会社取締役を歴任。この間、石和町とドイツ国バートメルゲント・ハイム市との国際交流にも貢献。平成5年、日仏経済交流会を設立し、2014年にはフランス国家功労勲章コマンド―ル受賞。

 この間に収蔵した美術品、文学資料等貴重資料は私蔵しておくには忍びないと、本会(小林是綱)に相談があり、勘次(平成29年没)の生前、古文書等歴史資料は山梨県立図書館に、美術品は山梨県立美術館、文学資料は山梨県立文学館(辻嵐外の「鴬や畳の上の塵を啼」、古屋蜂城の「花開萬國春」を含む9点)に寄贈し、その活用を後世に託した。

 この度、勘次妻・起子の申し出により、更に残されていた写真資料並びに商業資料等の整理を委託された本会は、ここに整理の結果として、ご遺族の了解を得て本会ウェブサイトに公開することとした。加えてすでに整理、目録化されている山梨県立博物館(山梨県立図書館から移管された資料)や、美術館への資料にはリンクをはって検索できるように構築した。文学館については目録のみとした。

 甲州財閥に準ずる名家であり、地方のリーダーとして社会的地位と財を築いた関本家の資料群は、本県のみならず日本の庶民史を語る上でも貴重なものといえるであろう。利用については、「利用にあたって」をご覧いただき、本会の許諾を経てご活用いただきたい。

2023年4月30日
特定非営利活動法人地域資料デジタル化研究会

【スタッフ】
総監督:小林是綱 
技術:丸山高弘 
制作担当:中澤京子 
制作担当:小澤千寿子
制作担当:小林義幸 
制作デスク:堀水清美 

関本家家系図